九重にかすみへだてば梅の花
ただかばかりも匂ひこじとや
- 歌の意味
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宮中と幾重にも霞が隔ててしまえば、梅の花よ、せめてこの香ばかりも匂ってこないというのだろうか。
- 鑑賞
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第一部 真木柱
帝が玉鬘の局にお渡りになったと聞いた髭黒は、ますます落ち着かず、急いで退出をおすすめ申し上げる。玉鬘自身も、あってはならないことも起こりそうな我が身だと情けなく、もっともらしい口実をいくつも作り出し、父内大臣の取りなしもあって、ようやく御暇を許されることになった。帝は、これに懲りて二度と出さぬ者があっては困る、人より先んじていた私の心が今は人に遅れてご機嫌をとっているとは、と本気で残念がられる。近くで拝見すればうわさよりはるかにまさる美しさなので、なおさら無念である。輦車を寄せて双方の供人が気をもみ、髭黒がやかましく付き添って騒ぐまで、帝はおそばを離れられず、こんなに厳重な近衛の護りはうるさいと憎まれて、この歌を詠まれた。
「九重」は幾重にもの意と宮中の意とを掛ける。「かすみへだてば」は霞が隔ててしまえばで、髭黒の邸深く囲われて逢えなくなることをいう。「梅の花」は玉鬘のたとえである。「かばかり」はこれくらいの意に「香ばかり」を掛け、姿は見られずとも香だけでもと訴える。梅は香でこそ知られる花であるから、「匂ひこじとや」の一語に、せめて便りだけでもという願いのすべてが凝縮している。語り手はとくに何ということもない歌だと断りながら、帝の御姿御物腰を拝していればしみじみ心に響いたであろうと添えており、歌の巧拙よりも場のありようを重んじる書きぶりである。
九重:幾重にもの意と、宮中の意とを掛ける。
かすみへだつ:霞が隔てる。遠く離れる。
梅の花:ここでは玉鬘のたとえ。
かばかり:これくらいの意に「香ばかり」を掛ける。
匂ひこじ:匂って来まい。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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