ながめする軒のしづくに袖ぬれて
うたかた人をしのばざらめや
- 歌の意味
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物思いに沈んでいる軒のしずくに袖が濡れて、ほんのひとときも、あなたを思い出さずにいられましょうか。
- 鑑賞
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第一部 真木柱
右近が人のいない隙にこっそりお目にかけると、玉鬘は泣いて、月日がたつにつれて思い出される源氏のお姿を、恋しい、どうにかして拝見したいなどとは、養い親という立場ゆえに口にできず、いったいどうすれば対面がかなうのかと心を痛められる。時にはわずらわしかった源氏のご様子を気に入らなく思っていたことは右近にも知らせていないので、胸の内ひとつで思いつづけるのだが、右近はそれとなく察していて、どのようなご関係だったのだろうと今も腑に落ちずにいる。玉鬘は「申し上げるのも畏れ多いですが、申し上げないでは気がかりでしょうから」と言ってこの歌を書き、たいそう礼儀正しく結ばれた。
「ながめ」は「長雨」に「眺め」すなわち物思いを掛ける。「軒のしづく」は軒からしたたる雨だれ、「うたかた」は水の泡で、ほんのしばらくの意をも表す。「しづく」「ぬれ」「うたかた」はいずれも長雨の縁語であって、一首がまるごと雨の言葉で編まれている。源氏の歌が「ふる」一語で雨と我が身とを結んだのに対し、こちらは景の語をいくつも重ねて答え、しかも「しのばざらめや」と反語で強く肯定する。ただし恋の言葉はひとつもなく、あくまで養い親を慕う言い方に終始する。源氏はこの文を広げて玉水のこぼれるように涙され、和琴を掻き鳴らしては、あの人の爪音を思い出されるのだった。
ながめ:「長雨」と「眺め」(物思い)とを掛ける。
軒のしづく:軒からしたたる雨だれ。
うたかた:水の泡。転じて、ほんのしばらくの意。
しのぶ:思い出す。恋しく思う。
ざらめや:…ないことがあろうか、いやある、という反語。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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