思はずに井手のなか道へだつとも
いはでぞ恋ふる山吹の花
- 歌の意味
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思いがけず井手の中道に隔てられてしまっても、口に出しては言わないまま恋いつづけている、山吹の花よ。
- 鑑賞
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第一部 真木柱
三月になり、六条殿の御前の藤や山吹の夕映えを御覧になるにつけても、源氏はまず、見がいがあってそこにいらした玉鬘の姿ばかりを思い出される。そこで春の御殿をあとにして、かつて玉鬘の住んだ夏の町へ渡って御覧になる。呉竹の生け垣にわざとらしくもなく咲きかかっている色あいが、たいそう風情がある。「色に衣を」と口ずさまれたのは、恋心を表に出さぬ衣を着ようという古歌によったものである。そして詠まれたのがこの歌で、「顔に見えつつ」と添えられるが、聞く人もいない。こうしてさすがに遠く離れてしまったことを、今になって実感なさるのだった。まことに不思議な御心のすさびである、と語り手は評する。
「思はずに」は思いがけずの意である。「井手」は山城の井手の里で、山吹の名所として名高い歌枕。「なか道」はそこを通る道で、二人を隔てる距離を象徴する。「いはでぞ恋ふる」は口に出さずに恋いつづけるということ。「山吹の花」は玉鬘をたとえ、山吹が井手の名物であることから、地名と花とが自然に結び合わされている。「山吹」には口無しの花の色である梔子色が響き、直前の「色に衣を」の引歌ともつながって、言わずに思うという主題が二重に押さえられている。贈るのでも書き付けるのでもなく、誰も聞かぬところで独りごちるという形が、この時期の源氏の孤独をよく表している。
思はずに:思いがけず。意外にも。
井手:山城国井手の里。山吹の名所として名高い歌枕。
なか道:途中を通る道。二人を隔てる距離のたとえ。
いはでぞ恋ふる:口に出さずに恋いつづける。
山吹の花:ここでは玉鬘をたとえる。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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