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巣がくれて数にもあらぬかりのこを
いづ方にかはとりかくすべき

歌の意味
巣の片隅に隠れて物の数にも入らない仮の子を、いったい誰がどこへ取り隠したりするでしょうか。
鑑賞
第一部 真木柱

 玉鬘が「ご返事は私には申し上げかねます」と、書きにくくお思いになっていると、髭黒が「私が申し上げましょう」と言って代筆したのが、この歌である。玉鬘ははらはらするばかりであった。「ご機嫌がよろしくないことに驚いております。色めいた御返事ではございますが」と書き添えてある。源氏はこれを御覧になって、この大将がこうした風流ごとを言うのは今まで聞いたことがない、めずらしいことだ、とお笑いになる。しかし心の中では、このように玉鬘を独占されているのを、まことに辛いとお思いになるのだった。

 「巣がくれて」は巣の陰に隠れての意。「かりのこ」は鴨の卵で、そこに「仮の子」を掛け、養女にすぎぬ身であることをいう。「数にもあらぬ」は物の数にも入らないという卑下の語である。源氏の「いかなる人か手ににぎるらん」に正面から応じ、取り隠す者などおりません、と否定してみせるのだが、その裏には、長く玉鬘を隠しつづけてきたのはそちらでしょう、という反撃が含まれている。律義一辺倒と語られてきたこの人が、卵の縁語を用いて掛詞まで仕立てているのが意外で、源氏が笑ったのもそのためである。とはいえ歌の応酬に勝ったのは実際に玉鬘を得た側であって、笑いの底には源氏の苦さが沈んでいる。

巣がくる:巣の陰に隠れる。目立たずにいる。
数にもあらず:物の数にも入らない。取るに足りない。卑下の語。
かりのこ:鴨の卵の意に「仮の子」を掛ける。
いづ方にかは:どこへ。どうして。
とりかくす:取り隠す。人目から隠す。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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