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花の枝にいとど心をしむるかな
人のとがめん香をばつつめど

歌の意味
その花の枝にこそ、いよいよ心が染みつくことです。人に咎められそうな香は、包み隠しているけれども。
鑑賞
第一部 梅枝

 源氏の返しである。御返事も同じ紅梅色の紙で、庭前の花を折らせて付けさせなさった。兵部卿宮は、中身の察せられるお手紙ですね、何を隠していらっしゃるのか、深くお隠しになることだ、と恨みごとを言って、たいそう知りたそうにしていらっしゃる。源氏は「何ということもありませんよ。やましいことがあるように邪推なさるのは困ります」と言って、硯のついでに書きつけられたのがこの歌であった、とでもいうのだろうか、と語り手はぼかして記している。

 「花の枝」は朝顔の歌の「散りにし枝」を受け、そのまま相手その人をさす。「心をしむる」は心が深く染みつくことで、香が「染む」意を掛ける。「人のとがめん香」は人に咎められるような香、すなわち世間に知られては困る恋心のたとえである。「つつむ」は包み隠す意で、香を包むことと思いを包むこととを重ねる。薫物の贈答という表向きの体裁を保ちながら、朝顔への思いがいまだ絶えていないことを言外に伝えており、傍らの宮が興味津々でいるという場面の緊張も効いている。語り手が「とやありつらむ」と伝聞めかして結ぶのも、この歌の際どさを承知した書きぶりである。

花の枝:花の咲く枝。前の歌を受け、朝顔の姫君をさす。
いとど:いよいよ。ますます。
心をしむ:心が深く染みつく。「香が染む」意を掛ける。
とがむ:非難する。咎める。
つつむ:包み隠す。はばかる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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