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花の香をえならぬ袖にうつしもて
事あやまりと妹やとがめむ

歌の意味
花の香を、なんともいえず結構な袖に移して持ち帰っては、間違いを犯したのだろうと、妻が咎めることでしょう。
鑑賞
第一部 梅枝

 明け方になって兵部卿宮がお帰りになるにあたり、源氏は御贈り物として、ご自身の御料の直衣の装束ひと揃いに、薫物合わせに使わなかった手つかずの薫物を二壺添えて、御車に差し上げられた。薫物の判者を務めた労に報いる贈り物である。それを受けて宮が詠まれたのがこの歌で、源氏は「ひどく気の弱いことですな」とお笑いになる。

 「えならぬ袖」はなんともいえず結構な袖で、贈られた直衣をさす。「うつしもて」は香を移して持ち帰るということ。「事あやまり」は女性との過ちをいう。「妹」は深い仲の女性、とくに妻である。もっとも宮は数年来独り住みと語られてきた人であるから、これはまったくの戯れ言であって、だからこそ源氏も気弱なことだと笑うのである。頂戴した衣の移り香を口実に冗談を言うのは、贈り物への謝辞としてもっとも洒落た形であって、判者を頼まれて煙たいと言っていた宮らしい締めくくりでもある。この巻の歌が終始「香」を軸に回っていることが、ここでも確かめられる。

花の香:花の香り。ここでは贈られた薫物の香。
えならぬ:なんともいえずすばらしい。
うつしもつ:香を移して持つ。
事あやまり:過ち。女性との間違い。
妹:親しい女性。とくに妻。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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