紫にかことはかけむ藤の花
まつより過ぎてうれたけれども
- 歌の意味
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紫の藤の花に、恨み言はかけることにしよう。松より高く伸びて咲きかかっているのはいまいましいけれども。
- 鑑賞
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第一部 藤裏葉
宴が進み、夕霧が参上した。内大臣は冠を着けてわざわざ客人として迎え、花見の興に移る。この藤の花だけが夏まで咲きかかるさまが奥ゆかしい、その紫の色も親しい縁とみなせよう、と意味ありげにほほ笑む。月が出て酒宴となり、内大臣は空酔いを装って夕霧に杯を強い、家礼の教えを持ち出して長年の恨みをほのめかす。そして頃合いを見て「藤の裏葉の」と古歌を口ずさみ、承諾の意を示した。その意を受けて柏木が、色濃く房の長い藤を折って客人の杯に添える。夕霧が受け取って応対に困っていると、内大臣が詠んだのがこの歌である。
「紫」は藤の花の色で、そのまま雲居雁をさす。「かことはかけむ」は恨み言を言おうということ。「まつ」は「松」に「待つ」を掛け、実際に松に藤が咲きかかっている景をも重ねる。「うれたけれども」はいまいましいけれどもの意で、藤の「末(うれ)」を響かせるとも解される。長年待たせたのはそちらだと恨みを言いつつ、その恨みは藤に、すなわち娘にこそ向けよう、というのだから、婿への非難を表向きは花にかこつけて和らげている。「藤の裏葉の」の古歌を承けたこの一首によって、内大臣の許諾はいよいよ確かなものとなる。松と藤という縁語を軸に、恨みと祝福とを一首に畳みこんだ、老練な詠みぶりである。
紫:紫の色。藤の花の色で、雲居雁をさす。
かこと:恨み言。不平。
かく:言葉を向ける。かける。
まつ:「松」に「待つ」を掛ける。
うれたし:いまいましい。しゃくにさわる。藤の「末」を響かせる。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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