いく返り露けき春を過ぐし来て
花の紐解く折にあふらむ
- 歌の意味
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幾たび涙にくれる春をすごしてきて、ようやく今、花の紐が解ける、その折にめぐりあうのでしょうか。
- 鑑賞
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第一部 藤裏葉
内大臣の歌への返しである。夕霧は杯を持ったまま、形ばかりの拝舞、すなわち感謝の所作をなさったさまが、まことに趣があった。そして詠んだのがこの一首である。このあと夕霧はこの杯を頭中将(柏木)に渡し、柏木がまた歌を継いでゆく。杯を受けたら歌を一首詠むのが酒宴の作法であって、この夜の唱和はその流れに沿って次々と生まれてゆく。
「いく返り」は幾たびの意である。「露けき春」は涙に濡れた春で、雲居雁に逢えぬまま過ごしてきた歳月をいい、「露」は涙をたとえる。「花の紐解く」は花のつぼみがほころぶことで、そこに恋の成就を重ねる。「万葉集」以来、花の開くさまを「紐解く」と言う例があり、それを承けている。何年も涙にくれてきた末に、ようやく花の開く折、すなわち願いのかなう時にめぐりあえるのだろうか、という感慨であって、内大臣の藤の花に、こちらは花の紐解く比喩で応じている。長い忍従が報われようとする瞬間の、抑えた喜びがにじむ一首である。
いく返り:幾たび。何度も。
露けし:露に濡れている。涙がちである。
過ぐし来て:過ごしてきて。
花の紐解く:花のつぼみがほころぶ。恋の成就をたとえる。
あふらむ:めぐりあうのだろうか。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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