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あさき名を言ひ流しける河口は
いかが漏らしし関の荒垣

歌の意味
浅はかな女だという評判を言い流した河口の、そのあなたの口は、どうやってあの関の荒垣を越えた一件を漏らしたのでしょう。
鑑賞
第一部 藤裏葉

 宿を求めた夕霧は、柏木に導かれて雲居雁のもとに入り、六年ぶりに契りを結んだ。夕霧は、恋死にして世の例にもなりそうだった身が一途な思いゆえに許されたのだ、それを分かってくれないのは薄情だと恨み言を言う。そして、先ほど弁少将が歌った「葦垣」の趣きを聞いたか、ひどい人だ、「河口の」とでも言い返してやりたかった、と言うと、雲居雁はひどく聞き苦しく思って、この歌を詠んだ。「あさまし(あきれたこと)」と言い添えるさまが、まことに可憐であった。

 「あさき名」は浅はかな女だという評判で、「あさし」は水の浅い意を掛ける。「言ひ流しける」は言いふらしたということ。「河口」は催馬楽「河口」に基づく地名で、そこに「口」を掛け、あなたの口の意とする。「関の荒垣」も同じ催馬楽の文句で、関の垣を越えて男と契ったことをいう。「いかが漏らしし」は「漏る」に「守る」を響かせるとも解される。あさはかな女という評判を流したのはあなたの口でしょう、その口がどうして二人の秘めごとを漏らしたのか、という詰問である。「あさし」「流し」「河口」「漏る」「関」がすべて水の縁語で編まれており、催馬楽を踏まえた機知の勝った応酬になっている。

あさき名:浅はかだという評判。「あさし」に水の浅い意を掛ける。
言ひ流す:言いふらす。
河口:催馬楽「河口」の地名。「口」を掛ける。
漏らす:秘密を漏らす。
関の荒垣:関所の粗い垣。催馬楽の文句による。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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