とがむなよ忍びにしぼる手もたゆみ
今日あらはるる袖のしづくを
- 歌の意味
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お咎めくださいますな。これまで人目を忍んで袖をしぼってきましたが、その手もゆるんで、今日あらわに落ちる袖のしずくを。
- 鑑賞
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第一部 藤裏葉
夕霧の後朝の文である。まだ人目を忍んでいた頃のような心づかいで届けられたが、雲居雁は昨日の今日ではすぐに返事もできずにいる。口さがない年配の女房たちがつつきあっているところへ、内大臣が来て文を御覧になるのは、まことに不都合であった。文には「どこまでもよそよそしかったあなたのご様子に、いよいよ身のほどを思い知らされ、堪えきれず消え入りそうですが」とあって、この歌が記されている。「たいそう字がお上手になられたものだ」と内大臣は笑うが、そこにはもう昔の恨みは微塵もなかった。
「とがむなよ」は咎めるなの意である。「忍びにしぼる」は人目を忍んで涙に濡れた袖をしぼることで、長年ひそかに流してきた涙をいう。「手もたゆみ」は袖をしぼる手もゆるんで、ということ。「今日あらはるる袖のしづく」は、結婚が公に許された今日、これまで隠してきた涙が表にあらわれて落ちる、という意である。長年こらえてきた涙が、うれし涙となって今日こそあふれ出る、それを咎めないでほしいという趣向であって、後朝の文としては珍しく、涙の主題が忍従から解放へと転じている。晴れて夫婦となった安堵と、これまでの歳月の重みとが、袖のしずく一点に凝縮されている。
とがむ:咎める。非難する。
忍びにしぼる:人目を忍んで濡れた袖をしぼる。
たゆむ:ゆるむ。気がゆるむ。
あらはる:表にあらわれる。人目につく。
袖のしづく:袖にかかる涙のしずく。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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