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双葉より名だたる園の菊なれば
浅き色わく露もなかりき

歌の意味
双葉のころから名高い園の菊なのですから、浅い色と分ける露など、初めからありはしませんでした。
鑑賞
第一部 藤裏葉

 源氏の菊の歌への返しである。「どんなにお心においていらしたことでしょう」と、いかにも馴れた調子で、そして苦しがりながら申し上げた。夕霧が中納言になったことで来客も多くなり、この栄えある婿君の面目もいよいよ立つのだった。このあと夕霧夫妻は、亡き祖母大宮のかつて住んだ三条殿に移り住み、昔をしのぶ日々を送ることになる。

 「双葉」は芽生えたばかりの二葉で、幼い頃をいい、源氏の歌の「若葉」に応じる。「名だたる園の菊」は名高い園に咲く菊で、由緒ある家柄に生まれた夕霧をさす。「浅き色わく露」は、浅い色と深い色とを分け隔てる露のことで、源氏の歌の「浅緑」「濃き紫」「露」をそっくり受けている。芽生えのときから名高い園の菊なのだから、浅い色だなどと差別する露は初めからなかった、という言い分である。かつて六位と侮られたことなどなかったことにしよう、この子はもとより将来を約束された子でしたよ、と源氏の得意に唱和しつつ、婿への非難めいた口ぶりを穏やかにたしなめる含みもある。菊と露の縁語を残らず引き取った、行き届いた返歌である。

双葉:芽生えたばかりの二葉。幼い頃のたとえ。
名だたる:名高い。評判の。
園の菊:名高い庭に咲く菊。名門に生まれた夕霧をさす。
浅き色わく:浅い色と深い色とを分ける。
露:菊に置く露。前の歌を受ける。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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