なれこそは岩もるあるじ見し人の
ゆくへは知るや宿の真清水
- 歌の意味
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お前こそはこの家を守る主だ。岩の間を漏れ流れる真清水よ、かつてここにいた人のゆくえを、お前は知っているだろうか。
- 鑑賞
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第一部 藤裏葉
夕霧は中納言に昇進して権勢が増し、住まいも手狭になったので、故大宮がかつて住んでいた三条殿に雲居雁とともに移り住んだ。すこし荒れていた邸を立派に修理し、大宮のいらした御殿を改めて住まうと、昔が思い出されてしみじみと理想的な住まいである。小さかった植え込みも深く繁った木蔭となり、生え放題だった一叢薄も手入れさせ、遣水の水草もかき改めて、流れは気持ちよさそうである。風情ある夕暮を二人で眺め、引き裂かれて辛かった幼い日の昔語りをするうち、恋しさもこみあげ、雲居雁は当時人がどう思っただろうと恥ずかしく思い出す。大宮存命のころから仕える古参の女房たちも散らずに集まり参って、みなうれしいことと思いあっていた。そのおり夕霧が詠んだのが、この歌である。
「なれ」はお前の意で、遣水の真清水に呼びかけている。「岩もる」は岩の間から漏れ流れることで、「もる」に「守る」を掛け、この家をずっと見守ってきた主だと真清水に呼びかける。「見し人」はかつてここに住んだ人、すなわち祖母大宮をさす。「ゆくへは知るや」は、その人の行く末を知っているか、という問いかけである。長らく水だけは変わらず流れつづけているのだから、亡き人の消息も知っていようという理屈で、変わらぬ自然に亡き人を偲ぶ。松風巻での明石の尼君と源氏の唱和にも通じる趣向である。念願かなって雲居雁と結ばれ、思い出の家に住まう幸福のただなかで、育ててくれた祖母を悼む、静かで奥行きのある一首である。
なれ:お前。ここでは遣水の真清水に呼びかける。
岩もる:岩の間から漏れ流れる。「もる」に「守る」を掛ける。
あるじ:主人。家を守る者。
見し人:かつて見た人。ここでは故大宮。
真清水:清らかに澄んだ湧き水。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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