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もりにける岫田の関を河口の
あさきにのみはおほせざらなん

歌の意味
漏れてしまった岫田の関のことを、河口が浅いからだと、私の口が軽いからだとばかり、責任をお負わせにならないでほしい。
鑑賞
第一部 藤裏葉

 雲居雁の歌への返しである。夕霧は少し笑ってこの歌を詠み、「長年すごしてきたことも、あまりに理不尽に悩ましくて、分別もつかない」と、酔いにかこつけて苦しげにふるまい、夜が明けるのも知らぬ顔であった。女房たちが起床を促しかねているので、内大臣は「したり顔で朝寝をするものだな」とぶつぶつ言うが、それでも夕霧は明けきらぬうちに退出する。その寝乱れた朝の顔は、見るかいがあった。

 「もりにける」は漏れてしまったの意で、「漏る」に「守る」を響かせる。「岫田の関」は河口の関の別称であり、「くき」に「漏き(漏れる意)」を掛ける。「河口のあさき」は河口付近に土砂がたまって水が浅いことで、そこに「口が軽い」意を掛ける。雲居雁の歌の「河口」「あさし」「漏る」「関」をそっくり受け継ぎ、同じ水の縁語で応じている。関がおのずと漏れたのであって、河口が浅いから、すなわち私の口が軽いからだとばかり責めないでほしい、という言い分である。相手の詠んだ語を一つ残らず引き取り、責任を関のせいにしてかわす手際が鮮やかで、契りを交わした二人の睦まじい応酬になっている。

もる:「漏る」に「守る」を響かせる。
岫田の関:河口の関の別称。「漏き」を掛ける。
河口のあさき:河口の水が浅いこと。「口が軽い」意を掛ける。
おほす:責任を負わせる。
ざらなん:…しないでほしい。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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