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たをやめの袖にまがへる藤の花
見る人からや色もまさらむ

歌の意味
たおやかな乙女の袖と見まがう藤の花は、見る人によって、その色もいっそう美しくまさるのでしょう。
鑑賞
第一部 藤裏葉

 夕霧から杯を回された頭中将(柏木)が詠んだ一首である。この次々に杯が回って歌が続いたが、酔いにまぎれてうまくゆかず、これより優れた歌はできなかった、と語り手は記している。四月七日の夕月の光がほのかに輝くなか、池の面が鏡のように澄みわたり、横たわる松に咲きかかった藤の花のさまは、世の常ならず風情があった。やがて弁少将が美声で催馬楽「葦垣」を歌い、内大臣も文句を替えて唱和し、宴はうちとけてわだかまりも消えてゆく。

 「たをやめ」はたおやかな乙女で、ここでは妹の雲居雁をさす。「袖にまがへる藤の花」は、藤の花房を乙女の袖に見立てたもので、藤の色と袖の色とが見分けがたいさまをいう。「見る人からや」は見る人によって、の意である。藤の花の美しさは見る人しだいでまさるというのだから、妹も夕霧に迎えられてこそいっそう美しく引き立つでしょう、という祝いの心がこめられている。兄として、妹と夕霧の縁組を寿ぐ立場からの一首であって、藤の花に雲居雁を重ねる趣向は内大臣の歌から一貫して受け継がれている。宴の座で杯とともに詠まれる祝言の歌として、過不足がない。

たをやめ:たおやかな女性。若い女。ここでは雲居雁。
まがふ:見分けがつかない。見まがう。
藤の花:ここでは雲居雁をたとえる。
見る人から:見る人によって。
色もまさる:色がいっそう美しくなる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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