色まさるまがきの菊もをりをりに
袖うちかけし秋を恋ふらし
- 歌の意味
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秋を経て色を増した籬の菊も、その折々に、袖をうちかけて舞ったあの秋を、恋しく思っているようだ。
- 鑑賞
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第一部 藤裏葉
神無月二十日すぎ、紅葉の盛りの六条院に、冷泉帝の行幸があった。朱雀院までもお渡りになるという、世にまたとない晴れがましい催しである。馬場殿での作法、鵜飼、紅葉の眺めと趣向を尽くし、日が暮れかかるころ、殿上の童たちの舞となる。賀王恩を奏するとき、太政大臣の末子で十歳ばかりの子が見事に舞い、帝が御衣を脱いで賜ると、太政大臣は御階の下に降りて拝舞なさる。それを見た源氏は、かつて朱雀院の紅葉の賀で、頭中将(今の太政大臣)と二人して青海波を舞ったあの日のことを思い出し、菊を手折らせて、この歌を詠みかけられた。
「色まさる」は秋を経て色をいっそう深める、の意である。「まがきの菊」は籬に咲く菊で、太政大臣をたとえる。「をりをりに」は折にふれての意。「袖うちかけし秋」は、袖をうちかけて舞った秋、すなわち紅葉賀で二人が青海波を舞ったあの日をさす。菊も色を増すこの折に昔の秋を恋うているようだ、というのは、そのまま、太政大臣になられたあなたも、若き日に共に舞ったあの秋を恋しく思っておられよう、という意になる。紅葉賀巻で、散り過ぎた紅葉に映えぬ源氏の顔を惜しんで頭中将が菊を挿頭に差し替えた、あの故事を踏まえての菊であって、二人だけに通じる追憶がこめられている。第一部の栄華の頂点で、若き日の親友と交わす、感慨深い唱和である。
色まさる:秋を経て色がいっそう深まる。
まがき:竹や柴で編んだ低い垣根。
菊:ここでは太政大臣のたとえ。
をりをりに:折にふれて。その時々に。
袖うちかく:袖をうちかけて舞う。青海波を舞ったことをいう。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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