世のつねの紅葉とや見るいにしへの
ためしにひける庭の錦を
- 歌の意味
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これを世の常の紅葉と御覧になりますか。昔の紅葉の賀の例にならって敷いた、この庭の錦を。
- 鑑賞
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第一部 藤裏葉
朱雀院の恨めしげな一首に応えて、冷泉帝が申し上げなさった歌である。帝は御容貌が成長なさるにつれていよいよ整い、源氏と瓜二つとお見えになる。そのおそばに夕霧が中納言としてお仕えし、その顔立ちがまた帝と別ものでないのが目を見張るほどである。あざやかで美しいことでは、夕霧のほうがまさるとまで見える。夕霧が笛を奏で、弁少将が唱歌の声を響かせ、なるほどしかるべき血筋には優れた人が出るものだと思わせる、両家の顔ぶれであった。この行幸の唱和をもって、藤裏葉巻は幕を閉じ、第一部が完結する。
「世のつねの紅葉」はありふれた普通の紅葉、の意である。「や見る」は御覧になりますか、という問いかけである。「いにしへのためし」は昔の先例、すなわち紅葉賀巻に描かれた朱雀院での紅葉の賀をさす。「ひける」はそれにならって整えた、の意。「庭の錦」は紅葉の敷きつめられた庭を錦に見立てた語である。この庭の紅葉はただの紅葉ではなく、あなた自身がかつて催された紅葉の賀の先例にのっとって整えたものなのです、という応じ方で、朱雀院を立てて慰める心づかいがこもる。院が去りゆく者の侘しさを詠んだのに対し、帝はその院の過去の栄光をこそ今日の催しの手本としたのだと返し、老いた院の心を思いやっている。少年の日の予言が実現した源氏の栄華の場に、帝みずからが世代のつながりをことほぐ一首を置いて、第一部は静かに閉じられる。
世のつね:世間並み。ありふれていること。
や見る:御覧になりますか。
いにしへのためし:昔の先例。ここでは朱雀院での紅葉の賀。
ひける:ならって整えた。
庭の錦:紅葉の敷きつめられた庭を錦に見立てた語。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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