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さしながら昔を今に伝ふれば
玉の小櫛ぞ神さびにける

歌の意味
挿したままの姿で昔から今へと伝わってきたので、この玉の小櫛もすっかり古びて神々しくなったことだ。
鑑賞
第二部 若菜上

 朱雀院は病が重くなり、かねてからの願いであった出家を決意する。ただ一つの心残りは、母を亡くして後見のない女三の宮のことであった。院は出家に先立って宮の裳着を営み、あわせて宮を託すべき婿を探す。裳着の儀にはあちこちから祝いの品が届き、秋好中宮からは櫛の箱が贈られた。中宮はかつて斎宮として伊勢へ下る日、別れの櫛を髪に挿してくれた朱雀院のことを思い出し、この歌を添えたのである。院はすぐに返しを詠み、二人の間に流れた長い年月をあらためて確かめ合う。

 「さしながら」は櫛を挿したままの意であるとともに、そのまま変わらずにという意を重ねている。「玉の小櫛」は美しい小櫛で、伊勢下向の折に賜った別れの櫛を受けた語である。「神さびにける」は古び神々しくなったという意で、神に仕えた斎宮の身の上をも響かせる。祝いの贈答歌でありながら、櫛という一つの品に過去と現在とを重ね、遠い日の別れを静かに思い返す形になっている。源氏物語の第二部が朱雀院の出家準備から始まることを示す、巻頭近くの一首である。

さしながら:櫛を挿したまま。そのまま変わらずの意を掛ける。
玉の小櫛:美しい小さな櫛。
神さぶ:古びて神々しくなる。
裳着:女子の成人を示す儀式。
斎宮:伊勢神宮に仕えた未婚の皇女。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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