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目に近く移れば変はる世の中を
行く末遠く頼みけるかな

歌の意味
目の前で移り変わっていく二人の仲であるのに、行く末は長いものと頼みにしていたことよ。
鑑賞
第二部 若菜上

 二月、朱雀院の願いを容れて、源氏は女三の宮を正妻として六条院に迎えることになる。長年正妻格として遇されてきた紫の上は、内心の動揺を隠し、降嫁の支度を落ち着いて整える。宮のもとへ渡る夜、紫の上は源氏の装束に香を薫きしめて送り出すが、その傍らで手習のように書きつけていたのがこの歌である。源氏はそれを取り上げて読み、すぐに返しを書く。以後、紫の上は表向き穏やかに振る舞いながら、次第に出家を願うようになっていく。

 「目に近く」は目のあたりにの意で、遠い先ではなく今この場でということである。「移れば変はる」は移ろえば変わってしまうということで、「世の中」は男女の仲を指す語でもある。行く末を頼みにしてきたという結びは、恨みを直接には言わず、自分の見通しの甘さを述べる形をとっている。声高に責めないことでかえって痛切さが増しており、源氏物語の中でも紫の上の心情をもっともよく伝える一首として知られる。

目に近く:目のあたりに。すぐ目の前で。
移れば変はる:移り変わってしまう。
世の中:世間。ここでは男女の仲。
行く末:これから先。
頼む:あてにする、たよりにする。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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