背く世のうしろめたくはさりがたき
ほだしをしひてかけな離れそ
- 歌の意味
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捨てた世が気がかりだとおっしゃるのなら、離れがたいその足かせから無理に離れようとなさらないでほしい。
- 鑑賞
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第二部 若菜上
朱雀院の「背きにし」の歌を受けて、紫の上が返したのがこの歌である。宮のことが気がかりでならないというなら、そもそも無理に離れなくてもよかったのではないかと、穏やかな言葉の裏で院の出家そのものを問い返している。紫の上自身、女三の宮の降嫁によって立場を揺るがされた身であり、その心情がこの返しの底に流れている。院はこの言葉をどう受け取ったか語られず、物語は六条院の日常へ戻っていく。
「背く世」は相手の歌の「背きにしこの世」を受けた語である。「ほだし」もそのまま引き取っており、贈答歌の作法は正確に守られている。「しひて」は無理にの意、「かけな離れそ」は離れなさるなという禁止の言い方である。相手が足かせを嘆いたのに対し、その足かせから離れるなと返すことで、同じ語を用いながら意味を反転させている。角を立てない言葉づかいの中に、はっきりとした批評が置かれた一首である。
うしろめたし:気がかりである、後ろに心が残る。
さりがたき:離れがたい。
ほだし:足かせ。妨げとなるもの。
しひて:無理に、強引に。
かけな離れそ:離れなさるな。「な~そ」は禁止。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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