涙のみ塞きとめがたき清水にて
ゆき逢ふ道ははやく絶えにき
- 歌の意味
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涙だけは関の清水のように塞き止めがたく流れるけれど、行き逢う道はもうずっと前に絶えてしまっていた。
- 鑑賞
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第二部 若菜上
源氏の「年月を」の歌を受けて、朧月夜が返したのがこの歌である。涙が流れることは認めながらも、二人が行き逢う道はすでに絶えていると告げ、はっきりと拒む意志を示している。源氏はこの返しに退かず、隔てを押し開けて対面を果たしてしまう。朧月夜はよりが戻ったことを嘆きつつ、しばらく逢瀬を重ね、やがて朱雀院の後を追って出家することを心に決めていく。
「塞きとめがたき」は相手の歌の「塞きがたく」を受けた語で、「清水」を添えることで逢坂の関の清水という景を明らかにしている。「ゆき逢ふ道」は逢坂の道であるとともに、近江路を響かせる語である。「はやく絶えにき」は、とうに絶えてしまったという断定である。相手の縁語をそのまま引き取りながら、涙は流れると認めた上で道は絶えたと切り返す構成で、感情と拒絶を一首の中に両立させた技巧的な返しになっている。
塞きとめがたき:せきとめることができない。
清水:逢坂の関の清水。歌枕。
ゆき逢ふ道:行き逢う道。「近江路」を響かせる。
はやく:とうに、ずっと以前に。
絶えにき:絶えてしまった。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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