身に近く秋や来ぬらむ見るままに
青葉の山も移ろひにけり
- 歌の意味
-
私の身近に秋が来たのだろうか。見ているうちに、青葉の山も色を変えてしまった。
- 鑑賞
-
第二部 若菜上
女三の宮の降嫁以来、紫の上は内心を押し隠して日を送ってきた。やがて秋になり、庭の草木が色を変えていくのを見るともなく眺めながら、源氏に向けて詠みかけたのがこの歌である。責める言葉は一つも用いていないが、季節の移りにかこつけて相手の心変わりを問う形になっている。源氏はすぐに返しを詠んで否定するものの、紫の上の思いは晴れず、この後も静かに出家への願いを深めていく。
「身に近く」は自分の身のあたりにということで、秋がよそごとではなく我が身に及んだと述べている。「秋」は季節の秋に「飽き」を掛けた語で、源氏に飽きられたのではないかという含みを持つ。「青葉の山」は青々とした木々の山で、変わらぬはずのものが変わってしまったことを示す。庭の景を述べるだけで自分の疑いを伝えるという、婉曲でありながら要点を外さない紫の上らしい詠みぶりである。
身に近く:自分の身のあたりに。
秋:季節の秋に「飽き」を掛ける。
見るままに:見ているうちに。
青葉の山:青々と葉の茂った山。
移ろふ:色が変わる。心変わりする意を掛ける。
- 作者
-
紫式部
- 出典
-
源氏物語
- その他の歌
-