しほたるる海人を波路のしるべにて
尋ねも見ばや浜の苫屋を
- 歌の意味
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涙にぬれているあなたを波路の案内として、訪ねて見てみたいものだ、あの浜の苫屋を。
- 鑑賞
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第二部 若菜上
明石尼君の「老の波」の歌を聞いた明石の女御が、続けて詠んだのがこの歌である。祖母の語る昔話に涙し、自分が生まれた明石の浦を一度見てみたいと述べている。生まれてすぐ紫の上のもとに引き取られ、都の御殿で育てられた女御は、自分の出自を語られてはじめてそれを我が身のこととして受け取った。この唱和は明石一族の長い苦難に一つの区切りを与える場面であり、翌年三月、女御は東宮の男御子を無事に出産する。
「しほたるる海人」は相手の歌の語をそのまま受け取り、涙にぬれる尼君を指している。「波路」は海の道で、「しるべ」は道案内のことである。「苫屋」は苫で屋根を葺いた粗末な小屋で、明石の浦の住まいを指す。祖母を案内役として生まれた土地を訪ねたいという内容は、単なる社交ではなく、自分の根をたずねようとする言葉になっている。贈答歌の作法どおりに語を継ぎながら、話の向きを過去から自分自身へ引き寄せた一首である。
しほたるる:涙にぬれる。
波路:海の道。海路。
しるべ:道案内、手引き。
苫屋:苫で屋根を葺いた粗末な小屋。
東宮:皇太子。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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