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よそに見て折らぬ嘆きはしげれども
なごり恋しき花の夕かげ

歌の意味
よそから見るばかりで手折ることのできない嘆きは深く茂るけれど、それでも名残の恋しい、あの花の夕影であることよ。
鑑賞
第二部 若菜上

 蹴鞠の日に女三の宮の姿を垣間見て以来、柏木の思いはいっそう募っていく。やがて宮に仕える小侍従を介して文を送り、その中に書き添えたのがこの歌である。小侍従は柏木の乳母子であり、この縁が後に二人を結びつけてしまう。宮自身は返事を書けそうにないため、小侍従が代わって返しを詠み、柏木の思いを退ける。柏木の執心はここでいったん抑えられるが、若菜下の巻でついに一線を越えることになる。

 「よそに見て」はよそから見るだけで、手が届かないことをいう。「折らぬ嘆き」は手折れない嘆きで、「嘆き」に「投げ木」を掛け、「しげれども」の「茂る」や「花」「折る」と縁語をなしている。「花の夕かげ」は夕日の光の中の花で、垣間見た宮の姿を指す。木と花にかかわる語を一首に通しつつ、届かない相手への執心を述べており、技巧の整った恋の歌である。同時に、垣間見という許されない発端をそのまま歌にしてしまう危うさも見えている。

よそに見て:よそから見るだけで。
折る:手折る。我がものにする意。
嘆き:「投げ木」を掛け、木の縁語となる。
しげる:茂る。嘆きが深まる意を掛ける。
夕かげ:夕日の光。
乳母子:同じ乳母に育てられた者。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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