恋ひわぶる人のかたみと手ならせば
なれよ何とて鳴く音なるらむ
- 歌の意味
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恋しく思い悩んでいる人の形見と思って手なずけているのに、馴れよというのに、どうしてそんな声で鳴くのだろう。
- 鑑賞
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第二部 若菜下
若菜上の巻の末、六条院の蹴鞠の日に唐猫が御簾を引き上げ、柏木は女三の宮の姿を垣間見てしまった。それ以来、柏木の思いは断ちがたく、せめてあの日の猫だけでも手もとに置きたいと願うようになる。猫を好む東宮のもとへ参上し、同じ血筋の猫を献じるなどして手を尽くしたすえ、ついに宮の飼っていた唐猫そのものを借り受けることに成功する。夜も傍らに寝かせて可愛がるうち、猫が鳴くのを聞いて詠んだのがこの独詠歌である。この執着は抑えられないまま、やがて女三の宮との密通へと向かっていく。
「恋ひわぶる人」は思い悩んでいる相手、すなわち女三の宮を指す。「かたみ」は形見で、猫を宮の身代わりとして扱っていることを示す。「手ならす」は手なずける意である。「なれよ」は馴れよという呼びかけで、猫の鳴き声を聞きなした語でもある。人ではなく猫に呼びかける形をとることで、口に出せない思いがそのまま漏れ出ており、源氏物語の中でも忘れがたい場面の一首になっている。
恋ひわぶ:恋しさに思い悩む。
かたみ:形見。故人や離れた人を偲ぶよすが。
手ならす:手なずける、飼い馴らす。
音:声。「鳴く音」で鳴き声。
唐猫:大陸から渡来した種の猫。当時は珍重された。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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