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誰れかまた心を知りて住吉の
神代を経たる松にこと問ふ

歌の意味
私のほかに誰がまた、昔のいきさつを知って、住吉の神代から立つ松に語りかけたりするだろうか。
鑑賞
第二部 若菜下

 冷泉帝が譲位し、明石の女御の産んだ第一皇子が東宮に立つ。かつて明石入道が住吉の神に立てた願は、こうしてことごとく叶えられた。源氏はその願果たしのため、十月に住吉神社へ参詣する。控えめに整えたつもりの一行は、それでも今を盛りの権勢をおのずから示すものとなった。社頭では東遊が奏され、源氏は須磨
明石に沈んでいた日々を目の前のことのように思い出す。この歌はその折、同じ一行に加わっていた明石尼君に贈られたものである。

 「心を知りて」は昔のいきさつを知っていての意で、明石での祈願から今日に至る経緯を指す。「住吉」は摂津の住吉神社で、明石一族が長く願を掛けてきた神である。「神代を経たる松」は神代から立ち続けてきた松のことで、長い年月の証として置かれている。「こと問ふ」は語りかけることをいう。自分だけがこの松と語り合えるのだという言い方で、明石の一族と歩んできた歳月への感慨を述べており、栄華の頂点に立つ源氏の述懐としてふさわしい一首である。

心を知る:事情やいきさつを知っている。
住吉:摂津国の住吉神社。海の神として信仰された。
神代:神々の時代。はるかな昔。
こと問ふ:ことばをかける、語りかける。
願果たし:願がかなった礼に社寺へ参詣すること。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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