明けぐれの空に憂き身は消えななむ
夢なりけりと見てもやむべく
- 歌の意味
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夜明けの薄暗い空に、このつらい身は消えてしまってほしい。夢だったのだと思って終わりにできるように。
- 鑑賞
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第二部 若菜下
柏木の「起きてゆく」の歌を受けて、女三の宮が返したのがこの歌である。宮は源氏が来たものと思って眠っていたところを襲われ、事の意味を十分に理解しないまま一夜を過ごしてしまった。返しには喜びも恨みもなく、ただこの身が消えてしまえばよいという願いだけが述べられている。柏木は立ち去った後も罪の意識に苛まれ、宮は人目を恐れて塞ぎ込む。やがて宮は懐妊し、二人の秘事は源氏の知るところとなっていく。
「明けぐれ」は相手の歌の語をそのまま受け取っており、贈答歌の作法は守られている。「憂き身」はつらいわが身のことである。「消えななむ」は消えてしまってほしいという願望の言い方で、「なむ」は他に対する願いを表す。「夢なりけりと見てもやむべく」は、夢だったと思ってそれきりにできるようにということである。起きた事実を打ち消したいという一心だけで詠まれており、技巧を用いる余裕のなさが、そのまま宮の受けた衝撃を伝えている。
明けぐれ:夜明け前のまだ暗いころ。
憂き身:つらい身の上。
消えななむ:消えてしまってほしい。
なむ:他に対する願望を表す助詞。
やむ:終わりにする、それきりにする。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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