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悔しくぞ摘み犯しける葵草
神の許せるかざしならぬに

歌の意味
悔しくも摘み取って罪を犯してしまった葵草であるよ。神が許した挿頭でもないのに。
鑑賞
第二部 若菜下

 女三の宮のもとを明け方に去った柏木は、妻である女二の宮のもとへも寄らず、そのまま実家の大殿へ忍んで帰る。人に顔を合わせるのも恐ろしく、床に就いても眠れない。犯してはならない相手を犯したという自覚が、時を追って重くのしかかってくる。この歌はその折の独詠歌である。柏木はこれ以後、目に見えて衰えていき、やがて病の床から起き上がれなくなる。若菜下の後半は、この一夜の重みが人々を追い詰めていく過程として展開する。

 「摘み犯しける」は摘み取って犯したということで、「摘み」に「罪」を掛けている。「葵草」は賀茂の祭に用いる草で、「葵」に「逢ふ日」を掛けるのが古歌以来の型であり、ここでは女三の宮との一夜を指す。「かざし」は髪や冠に挿す飾りで、神事において許された者だけが身に着けるものであった。「神の許せるかざしならぬに」は、神の許しを得た間柄ではないのにという意で、罪の自覚をそのまま言い切っている。祭の景を借りて自らを裁く、痛切な一首である。

摘み犯す:摘み取る。「罪犯す」を掛ける。
葵草:賀茂の祭に用いる草。「逢ふ日」を掛ける。
かざし:髪や冠に挿す飾り。
神の許せる:神が許した。正式に認められた。
大殿:父である太政大臣の邸。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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