待つ里もいかが聞くらむ方がたに
心騒がすひぐらしの声
- 歌の意味
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私を待っている里ではどのように聞いているだろうか。あちらでもこちらでも心を騒がせる、ひぐらしの声であることよ。
- 鑑賞
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第二部 若菜下
女三の宮の「夕露に」の歌を受けて、源氏が返したのがこの歌である。帰りを待つ紫の上のことを持ち出し、自分もまた双方に心を騒がせているのだと述べて、宮の恨みをやわらかく受け流している。源氏はそのまま二条院へ戻るが、翌朝ふたたび出立しようとした折に柏木の手紙を見つけ、二人の関係を疑い始める。以後、源氏は宮に対しても柏木に対しても、表向き穏やかなまま冷ややかな態度を取り続けることになる。
「待つ里」は帰りを待っている所のことで、二条院の紫の上を指す。「方がたに」はあちらこちらにということで、二条院と六条院の双方に心を配らねばならない立場を述べている。「ひぐらしの声」は相手の歌の語をそのまま受け取っており、贈答歌の作法は守られている。宮の恨みを正面から受けず、自分も同じように心が休まらないのだと述べて話をずらす構成で、角を立てない代わりに相手の訴えには答えていない。若菜下の後半へ向かう、静かな緊張をはらんだ一首である。
待つ里:帰りを待っている家。ここでは二条院。
いかが聞くらむ:どのように聞いているだろうか。
方がた:あちらこちら。両方。
心騒がす:心を落ち着かなくさせる。
ひぐらし:夕暮れに鳴く蝉。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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