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立ち添ひて消えやしなまし憂きことを
思ひ乱るる煙比べに

歌の意味
私も一緒に立ち添って消えてしまいたい。つらいことに思い乱れる、その嘆きの煙を比べ合って。
鑑賞
第二部 柏木

 柏木の「今はとて」の文を受け取った女三の宮は、あの一夜のことを思い出すのも恥ずかしく、返事など書くまいと思う。しかし小侍従が繰り返し促すので、いやいやながら筆を執り、ようやくこれだけを書いた。小侍従がその返しを届けると、柏木は涙にむせび、さらに一首を書き添える。宮はこの後まもなく男子を出産する。生まれた若君が薫である。

 「立ち添ひて」は煙に添って一緒に立つことで、「立つ」は煙の縁語である。「消えやしなまし」は消えてしまいたいという願望を含んだ言い方である。「煙比べ」はどちらの嘆きの煙が多いかを比べるということで、相手の歌の「煙」を受けたうえで作られた語である。柏木が死後に残る執着を詠んだのに対し、宮は自分も同じように消えたいと述べており、恋の言葉は一つもない。返歌の形は保ちながら、内容は身の置きどころのなさに終始しているところに、宮の追い詰められた立場が表れている。

立ち添ふ:寄り添って一緒に立つ。「煙」の縁語。
消えやしなまし:消えてしまいたいものだ。
憂きこと:つらいこと。
煙比べ:嘆きの煙の多さを比べること。
薫:女三の宮が産んだ男君。第三部の主人公。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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