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世を別れ入りなむ道はおくるとも
同じところを君も尋ねよ

歌の意味
この世を離れて入っていく仏の道は、私より遅れることになっても、同じ極楽の所をあなたも求めてきなさい。
鑑賞
第二部 横笛

 柏木の一周忌が巡ってきた。源氏は内心ひそかに薫の分としても手厚い布施を用意し、事情を知らない致仕の太政大臣はその厚志に感謝しつつ、あらためて悲しみを新たにする。山にこもる朱雀院は、女三の宮が出家し、女二の宮が夫を失ったという娘たちの相次ぐ不幸を嘆いていた。院は御寺のあたりで採れた筍や野老を女三の宮のもとへ贈り、この歌を添える。宮はすぐに返しを詠み、父と娘はそれぞれの山路を思い合うことになる。

 「世を別れ」は俗世を離れることで、出家を指す。「入りなむ道」は仏道に入る道である。「おくるとも」は私より遅れてもという意で、先に出家した父が娘に呼びかける形をとっている。「ところ」は場所の意であるが、贈り物の野老を掛けており、山の恵みを添えた贈答らしい趣向になっている。同じ極楽浄土で会おうと述べる内容は、この世での再会が難しいことを裏側から示しており、父娘の別れの深さが静かに伝わってくる。

世を別る:俗世を離れる。出家する。
おくる:遅れる、後になる。
ところ:場所。贈った「野老」を掛ける。
野老:山野に生えるつる草。根を食用にする。
一周忌:死後一年目の法要。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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