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深き夜のあはればかりは聞きわけど
ことより顔にえやは弾きける

歌の意味
夜の深い風情だけは聞き分けたけれど、思いを顔に出すように琴を弾くことなどできようか。
鑑賞
第二部 横笛

 夕霧の「ことに出でて」の歌を受けて、落葉の宮が返したのがこの歌である。秋の夜の情趣は分かるものの、思いをあらわすように弾いたわけではないと述べ、想夫恋を弾いたことに含みを持たせようとする夕霧をやんわりと退けている。夕霧はこの慎ましい応じ方にかえって心を動かされ、以後も一条宮への訪問を重ねていく。この夜、帰りぎわに母の一条御息所から柏木の遺愛の横笛を贈られることになる。

 「深き夜のあはれ」は夜更けの情趣のことである。「聞きわく」は聞いて区別する、聞き取ることをいう。「ことより顔に」は琴に思いを託して顔に出すようにということで、相手の歌と同じく「こと」に「琴」と「言」とを掛けている。「えやは弾きける」は弾くことなどできようかという反語である。相手の掛詞をそのまま引き取ったうえで、意図を否定して返す構成であり、控えめでありながら受け答えとしては的確な一首である。

あはれ:しみじみとした情趣。
聞きわく:聞いて区別する、聞き取る。
ことより顔:思いを言葉や琴にあらわすような様子。
えやは:~できようか。反語。
遺愛:故人が生前に愛用したもの。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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