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山賤の籬をこめて立つ霧も
心そらなる人はとどめず

歌の意味
山里の粗末な垣根をこめて立ちこめる霧も、心が上の空である人を引き止めはしない。
鑑賞
第二部 夕霧

 夕霧の「山里の」の歌を受けて、落葉の宮が返したのがこの歌である。霧を口実に泊まろうとする夕霧に対し、その気がないのなら霧が引き止めるはずもないと述べ、暗に帰るよう促している。しかし夕霧は退かず、そのまま山荘にとどまり、夜になって宮の部屋に忍び入ってしまう。宮は御簾越しに拒み続け、夕霧は積年の思いを訴えるが、思いは遂げられないまま夜が明けていく。

 「山賤」は山里に住む身分の低い者のことで、ここでは自分たちの粗末な住まいを卑下して言っている。「籬」は柴や竹で編んだ垣根である。「こめて」は包み込んでの意で、霧が垣根一帯に立ちこめるさまをいう。「心そらなる」は心が上の空であることで、相手の歌の「空」を受けつつ、誠意を疑う語に転じている。相手の景と語をそのまま用いながら、意味だけを反転させる構成であり、拒絶を穏やかに包んだ返しになっている。

山賤:山里に住む身分の低い者。ここでは自らの卑下。
籬:柴や竹で編んだ粗い垣根。
こむ:包み込む、立ちこめる。
心そらなり:心が上の空である。誠意がない。
御簾:部屋を仕切るすだれ。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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