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荻原や軒端の露にそぼちつつ
八重立つ霧を分けぞ行くべき

歌の意味
荻原の軒端の露にすっかり濡れながら、幾重にも立つ霧を分けて帰って行かねばならないのだろう。
鑑賞
第二部 夕霧

 結局、思いは遂げられぬまま夜が明けていく。月は隈なく澄みわたり、霧にも紛れずに射し込んでいた。人目には一夜を共にしたと見えるかたちで、夕霧は山荘を出ることになる。この歌はその立ち去りぎわに詠まれたもので、露に濡れ霧を分けて帰る自分の姿を述べ、宮の同情を引こうとしている。宮は返しを詠んでそれも退ける。そして夕霧の朝帰りの姿を祈祷の律師が目にしたことから、事は思わぬ方向へ動き出す。

 「荻原」は荻の生い茂る原のことである。「軒端の露」は軒先に置く露で、涙をたとえる語でもある。「そぼつ」はぐっしょり濡れることをいう。「八重立つ霧」は幾重にも立ちこめる霧で、帰り道の困難を表すとともに、二人の間の隔てをも示している。露と霧という朝の景を重ねて自分の難儀を訴える構成であり、後朝の別れの型を借りながら、実際には何もなかったという皮肉な状況が下敷きになっている。

荻原:荻の生い茂る原。
軒端の露:軒先に置く露。涙のたとえ。
そぼつ:ぐっしょり濡れる。
八重立つ:幾重にも重なって立つ。
律師:僧位の一つ。加持祈祷を行う僧。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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