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見し人の影澄み果てぬ池水に
ひとり宿守る秋の夜の月

歌の意味
見慣れたあの人の面影ももう澄んで映らない池の水に、ひとり邸を守っている秋の夜の月であることよ。
鑑賞
第二部 夕霧

 小野からの帰り道、夕霧は柏木が住んでいた一条宮のそばを通りかかる。主を失った邸は人気もなく荒れており、庭の池だけが昔のままに月を映していた。十三日の月がはなやかに射し出るのを眺めながら、夕霧は亡き友を偲んでこの歌を詠む。この後、夕霧は落葉の宮をこの一条宮へ連れ戻す算段を進め、宮の意向を待たずに車を手配して実行に移すことになる。

 「見し人」は見慣れた人、親しかった人のことで、亡き柏木を指す。「影澄み果てぬ」は姿が澄んで映ることがもうないということで、「影」は人の面影と月の光とを兼ねている。「澄み」には「住み」を掛け、もはやこの邸に住む人がいないことを示す。「宿守る」は邸を守ることで、住む人のいない家をひとり月だけが照らしているという構図である。掛詞を重ねながら、友を失った喪失感を静かな叙景に収めた一首である。

見し人:見慣れた人。ここでは亡き柏木。
影:面影。月の光。
澄む:澄む。「住む」を掛ける。
宿守る:邸を守る。
十三日の月:陰暦十三日ごろの月。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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