契りあれや君を心にとどめおきて
あはれと思ふ恨めしと聞く
- 歌の意味
-
前世からの縁があるのだろうか。あなたのことを心にとどめて、いたわしいと思う一方で、恨めしいとも聞いている。
- 鑑賞
-
第二部 夕霧
夕霧と落葉の宮のことは世間の噂となり、雲居雁が実家へ帰ってしまったことも致仕大臣の耳に入る。娘が人笑われな目にあっていることを嘆いた大臣は、柏木の弟である蔵人少将を使いとして、落葉の宮のもとへ文を送る。この歌はその文に書かれたものである。宮は思いがけない詰問に困惑しながらも、返しを詠んで応じた。柏木の妻であった宮と、その父である大臣との関わりが、ここでもう一度取り上げられる。
「契りあれや」は前世からの縁があるのだろうかという意である。「心にとどめおきて」は心に思い置いてということである。「あはれと思ふ」はいたわしく思うことで、宮が亡き息子の妻であることによる。「恨めしと聞く」は恨めしいと聞いているということで、宮が娘の夫を奪ったと世間で言われていることを指す。同情と恨みという相反する感情を一首の中に並べる構成であり、板ばさみとなった父親の複雑な立場がそのまま言い表されている。
契り:前世からの縁。約束。
とどめおく:心に思い置く。
あはれと思ふ:いたわしく思う。
恨めし:恨めしい、うらみに思う。
蔵人少将:柏木の弟。ここでは使者を務める。
- 作者
-
紫式部
- 出典
-
源氏物語
- その他の歌
-