何ゆゑか世に数ならぬ身ひとつを
憂しとも思ひかなしとも聞く
- 歌の意味
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どうして、世に数にも入らないこの身ひとつを、つらいとも思い、いとしいともお聞きになるのだろう。
- 鑑賞
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第二部 夕霧
致仕大臣の「契りあれや」の歌を受けて、落葉の宮が返したのがこの歌である。世に数にも入らない自分のことを、なぜいたわしいとも恨めしいとも言われるのかと述べ、夕霧とのことは自分の意思によるものではないと暗にほのめかしている。宮は望んでこの立場に置かれたわけではなく、母を失い、父にも出家を許されず、夕霧に押し切られてきただけである。この贈答は、その受け身の立場をあらためて浮かび上がらせている。
「何ゆゑか」はどういうわけでという意である。「世に数ならぬ身」は世間で人の数にも入らない身の上のことで、自らを卑下する言い方である。「憂しとも思ひ」はつらいと思うことで、相手の「恨めし」を受けている。「かなしとも聞く」はいとしいとも聞くということで、相手の「あはれ」を受けた語である。相手が並べた二つの感情をそのまま並べ返し、そのどちらも自分には身に覚えがないと示す構成であり、控えめな言葉づかいの中に確かな否認が置かれている。
何ゆゑか:どういうわけで。
世に数ならぬ身:人の数にも入らない身の上。
憂し:つらい、いとわしい。
かなし:いとしい、心が引かれる。
否認:事実ではないと打ち消すこと。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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