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露けさは昔今ともおもほえず
おほかた秋の夜こそつらけれ

歌の意味
涙に濡れることは、昔とも今とも区別して思われない。だいたい秋の夜というものが、つらいのだ。
鑑賞
第二部 御法

 致仕大臣の「いにしへの」の歌を受けて、源氏が返したのがこの歌である。昔の悲しみも今の悲しみも区別がつかないと述べ、悲しみを個別のものとしてではなく、秋の夜そのもののつらさとして受け止めている。かつては互いに競い合う仲でもあった二人が、年を重ねて同じ喪失を分け合う場面である。源氏はこの後いよいよ人と会わなくなり、出家への思いを深めながらも、世間の目を気にして踏み切れないまま日を送る。

 「露けさ」は涙に濡れていることで、相手の歌の「露」を受けた語である。「昔今ともおもほえず」は昔とも今とも区別して思われないという意である。「おほかた」はだいたい、総じてという意である。「秋の夜こそつらけれ」は秋の夜こそがつらいのだという強調で、「こそ」の結びとして已然形が用いられている。相手が二つの秋を並べたのに対し、区別がつかないと返して秋そのものへ話を移す構成であり、悲しみを一般化することでかえって深さを示している。

露けさ:涙に濡れていること。
おもほえず:思われない、感じられない。
おほかた:だいたい、総じて。
こそ~けれ:強調の係り結び。
出家:世を捨てて仏門に入ること。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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