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憂き世には雪消えなむと思ひつつ
思ひの外になほぞほどふる

歌の意味
つらいこの世から雪のように消えてしまいたいと思いながら、思いのほかに、まだこうして日を送っていることだ。
鑑賞
第二部 幻

 春になっても源氏の心は晴れない。人前に出ることを避け、出家を願いながらも、世間の目を思うと踏み切ることができないまま日を過ごしている。雪の降る日、庭を眺めながら詠んだのがこの独詠歌である。紫の上を失って以来、源氏は身のまわりのすべてを整理しはじめ、その一方で自分がなお生き続けていることに戸惑い続ける。幻の巻に収められた源氏の歌は二十首近くに及び、その大半がこうした独詠である。

 「憂き世」はつらいこの世のことである。「雪消えなむ」は雪のように消えてしまいたいという意で、「雪」に「行き」を掛け、この世を去る意を重ねている。「思ひの外に」は思いのほかに、意外にもという意である。「ほどふる」は時を過ごすことで、「ふる」に雪が「降る」を掛けており、「雪」の縁語をなしている。雪という一つの景に、消えたい願いと消えられない現実の両方を負わせる構成であり、掛詞の技巧が嘆きの深さと釣り合っている。

憂き世:つらいこの世。
雪消え:雪が消える。「行き消え」を掛ける。
思ひの外:思いのほか、意外にも。
ほどふる:時を過ごす。「降る」を掛ける。
独詠歌:相手に贈らず一人で詠む歌。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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