夏衣裁ち替へてける今日ばかり
古き思ひもすすみやはせぬ
- 歌の意味
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夏の衣に裁ち替えた今日ぐらいは、昔のことを思い出す気持ちも進んではこないだろうか。
- 鑑賞
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第二部 幻
四月、衣替えの季節になる。花散里は源氏に夏の装束を贈り、この歌を添えた。花散里は源氏の妻の一人として長く六条院の夏の御殿に住み、華やかさとは無縁のまま変わらぬ穏やかさを保ってきた人である。紫の上とも争うことなく過ごしてきた間柄であり、その死を静かに悼んでいる。源氏は返しを詠み、衣の薄さにかこつけてこの世のはかなさを述べる。この年の源氏の日々は、こうした季節の折々の贈答によって刻まれていく。
「夏衣」は夏に着る薄い衣のことである。「裁ち替へてける」は布を裁って新しく仕立て替えたということで、「裁つ」は「衣」の縁語である。「今日ばかり」は今日ぐらいはという意である。「古き思ひ」は昔のことを思う気持ちで、亡き紫の上を偲ぶ心を指す。「すすみやはせぬ」は進んではこないだろうかという問いかけである。衣替えという年中行事を手がかりに追憶を促す構成で、押しつけがましさのない、この人らしい心づかいの一首である。
夏衣:夏に着る薄い衣。
裁ち替ふ:布を裁って新しく仕立て替える。
今日ばかり:今日ぐらいは。
古き思ひ:昔を思い出す気持ち。
花散里:源氏の妻の一人。六条院の夏の御殿に住む。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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