おほかたは思ひ捨ててし世なれども
葵はなほや摘みをかすべき
- 歌の意味
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だいたいのものは思い捨ててしまったこの世だけれども、葵だけはやはり摘んで罪を犯してしまうべきだろうか。
- 鑑賞
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第二部 幻
中将の君の「さもこそは」の歌を受けて、源氏が返したのがこの歌である。世のことはおおかた思い捨てたつもりだが、葵だけはやはり摘みたくなると述べ、目の前の相手への軽い戯れとして返している。出家を思う身でありながら、こうした冗談を口にできるあたりに、源氏の心の揺れが表れている。この後、五月になると夕霧が訪れ、ほととぎすの声を聞きながら二人で紫の上を偲ぶことになる。
「おほかたは」はだいたい、大部分はという意である。「思ひ捨ててし世」は思い切って捨てた俗世のことで、出家の志を指している。「葵」は賀茂祭の草で、「逢ふ日」を掛けるのが古歌以来の型であり、ここでは中将の君を暗に指している。「摘みをかす」は摘み取ることに「罪を犯す」を掛けた言い方である。「摘む」「犯す」「葵」はいずれも神事にかかわる縁語をなしており、戯れの歌でありながら手数は行き届いている。
おほかた:だいたい、大部分は。
思ひ捨つ:思い切って捨てる。
葵:賀茂祭に用いる草。「逢ふ日」を掛ける。
摘みをかす:摘み取る。「罪を犯す」を掛ける。
中将の君:源氏に仕えた女房。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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