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亡き人を偲ぶる宵の村雨に
濡れてや来つる山ほととぎす

歌の意味
亡き人を偲んでいる今宵の村雨に濡れながらやって来たのか、山のほととぎすよ。
鑑賞
第二部 幻

 五月、雨の多い季節になる。夕霧が訪れて源氏と語り合い、庭の花橘や、通りかかるほととぎすの声に耳を傾けた。ほととぎすは死者の世界と往き来する鳥と考えられ、亡き人を偲ぶ折に詠まれるのが習いであった。源氏がまず詠み、夕霧が続けて詠んで、二人の唱和となる。父子が並んで紫の上を偲ぶこの場面は、幻の巻でも数少ない人の気配のある一節である。

 「亡き人」は紫の上を指す。「偲ぶる宵」は故人を思い出している夜のことである。「村雨」はひとしきり激しく降る雨のことで、五月の景物である。「濡れてや来つる」は濡れながらやって来たのかという問いかけである。「山ほととぎす」は山から出てくるほととぎすで、冥途との往来を思わせる鳥である。庭に響く一声に亡き人の便りを重ねる型を用いており、追悼の歌としてよく整った一首である。

村雨:ひとしきり激しく降る雨。
偲ぶ:故人を思い出して慕う。
ほととぎす:夏に鳴く鳥。冥途を往き来するとされた。
花橘:橘の花。昔を思い出させるものとされた。
唱和歌:複数の者が題を同じくして詠み交わす歌。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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