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君恋ふる涙は際もなきものを
今日をば何の果てといふらむ

歌の意味
あの方を恋い慕う涙には際限もないのに、今日という日を、いったい何の終わりだというのだろう。
鑑賞
第二部 幻

 八月十四日、紫の上の一周忌が巡ってくる。法事は盛大に営まれ、源氏は経を書き、供養の品を整えた。忌が明けるということは、表向きは悲しみに一区切りがつくことを意味する。しかし仕える女房たちの思いは尽きない。中将の君はその日、源氏に向けてこの歌を詠み贈った。源氏は返しを詠み、自分の余命こそ短いが涙は尽きないと述べる。一周忌を過ぎても、源氏の喪はまったく終わらない。

 「君」はここでは亡き紫の上を指す。「涙は際もなき」は涙に際限がないという意である。「今日」は一周忌の当日を指す。「何の果て」は何の終わりかという問いで、「果て」は忌明けを指している。一周忌という制度上の区切りに対して、心の側には区切りなどないと言い返す構成であり、儀礼と実感の食い違いをそのまま突いた一首である。長く仕えた者の実感がこもっている。

君:ここでは亡き紫の上。
際もなし:際限がない。
果て:終わり。ここでは忌明け。
忌明け:喪に服する期間が終わること。
法事:死者の供養のための仏事。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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