人恋ふるわが身も末になりゆけど
残り多かる涙なりけり
- 歌の意味
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人を恋い慕うこの身も残り少なくなっていくけれど、涙のほうは残りが多いのであった。
- 鑑賞
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第二部 幻
中将の君の「君恋ふる」の歌を受けて、源氏が返したのがこの歌である。自分の余命はもう短いのに、涙だけは尽きる気配もないと述べ、一周忌を過ぎてなお悲しみが去らないことを認めている。源氏はこの年、出家の志を固めながら踏み切れずにいたが、この時期からいよいよ身のまわりを整理しはじめる。やがて十二月には紫の上の手紙を焼き捨て、年の暮れには自らの生涯を締めくくる歌を詠むことになる。
「人恋ふる」は人を恋い慕うということで、亡き紫の上を思う心を指す。「わが身も末に」は自分の余命も残り少なくの意で、「末」は行く末、終わりを表す。「残り多かる涙」は残りの多い涙ということで、余命の少なさと涙の多さとを対に置いている。相手の歌の「涙」「果て」を受けながら、尽きるものと尽きないものとを入れ替えて返す構成であり、贈答の作法を守りつつ、源氏の晩年の心境をそのまま述べた一首になっている。
人恋ふる:人を恋い慕う。
末:行く末、終わり。ここでは余命。
残り多かる:残りが多い。
出家:世を捨てて仏門に入ること。
辞世:死に際して詠む歌。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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