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宮人は豊明といそぐ今日
日影も知らで暮らしつるかな

歌の意味
宮中の人々が豊明の節会だといって浮き立っている今日、私は日の光も知らないままに暮らしてしまったことだ。
鑑賞
第二部 幻

 十一月、五節の舞が終わり、豊明の節会が行われる。宮中は華やかにわき立ち、若い人々は日蔭の蔓を冠に飾って参列する。しかし源氏はその賑わいにまったく入り込むことができず、庭にさす日の光さえ見ないまま一日を過ごした。この歌はその折の独詠歌である。かつて自らが青海波を舞い、五節の舞姫に歌を贈った人物が、今は行事の音を遠くに聞くだけの身となっている。この対比が、源氏の生涯の終わりを静かに告げている。

 「宮人」は宮中に仕える人々のことである。「豊明」は新嘗祭の翌日に行われる節会で、五節の舞が奏された。「いそぐ」は浮き立って忙しくすることである。「日影」は日の光のことで、豊明の節会で冠に飾る「日蔭の蔓」を掛けている。「暮らしつるかな」は一日を過ごしてしまったことだという嘆きである。宮中の光と自室の暗さを対に置く構成で、掛詞一つによって行事と孤独を結び合わせている。

宮人:宮中に仕える人々。
豊明:新嘗祭の翌日に行われる節会。
いそぐ:浮き立って忙しくする。
日影:日の光。「日蔭の蔓」を掛ける。
日蔭の蔓:節会で冠に飾る植物。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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