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もの思ふと過ぐる月日も知らぬまに
年もわが世も今日や尽きぬる

歌の意味
物思いに沈んで、過ぎていく月日も知らないうちに、今年も、そして私の一生も、今日で尽きてしまうのだろうか。
鑑賞
第二部 幻

 年の暮れとなり、六条院では追儺の行事が行われる。源氏は幼い匂宮が邸内を走り回るのを眺め、この子の成長も自分は見られないだろうと思う。紫の上を失って以来の一年は、物思いのうちに過ぎ去っていった。この歌はその折の独詠歌であり、光源氏が生涯に詠んだ最後の一首である。この後、源氏の姿は本文から消え、次の巻名として本文を持たない「雲隠」が置かれる。物語は八年の空白を経て、薫と匂宮の世代へと引き継がれていく。

 「もの思ふ」は物思いに沈むことである。「過ぐる月日も知らぬまに」は過ぎていく月日にも気づかないうちにという意である。「年もわが世も」は今年という一年も自分の生涯もということで、「世」は生涯を指す。「今日や尽きぬる」は今日で尽きてしまうのだろうかという意である。大晦日という一年の終わりと、自らの一生の終わりとを一つの日に重ねる構成であり、五十四帖の物語の主人公の退場にふさわしい、静かで大きな一首である。

もの思ふ:物思いに沈む。
過ぐる月日:過ぎてゆく月日。
わが世:自分の生涯。
尽く:尽きる、終わる。
追儺:大晦日に鬼を追い払う行事。
雲隠:本文を持たない巻名。源氏の死を暗示する。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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