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折りて見ばいとどにほひもまさるやと
すこし色めけ梅のはつ花

歌の意味
折って見たらいっそう香りもまさるだろうかと思う、もう少し色づいてほしい、梅の初花よ。
鑑賞
第三部 竹河

 髭黒太政大臣が世を去った後、玉鬘は残された三男二女を抱え、傾いた家をどうにかしようと心を砕いていた。大君には今上帝からも冷泉院からも声がかかり、薫や夕霧の子の蔵人少将も大君に思いを寄せている。薫十五歳の正月、夕霧に従って集まった若い公達に一足おくれて薫が姿を見せると、若い女房たちはやはり格別だと騒ぎ、この殿の姫君の横にこそ並べて見たいなどと聞き苦しいことまで言う。玉鬘は念誦堂にいてこちらへと招き、薫は東の階から上がって戸口の御簾の前に座る。庭先の梅の若木はまだ固いつぼみで、鶯の初声ものどかである。女房たちがとりとめもない冗談をしかけても薫は言葉少なで奥ゆかしいままなので、それを物足りなく思った上臈の宰相の君が詠みかけたのがこの歌である。薫はすぐさま返し、女房たちはいっそう色めき立つ。

 「梅のはつ花」は薫のたとえで、まだつぼみの若木の梅に薫の若さを重ねている。「色めけ」は花が色づくことと、色めいたふるまいをすることとを掛けており、まじめ一方の薫にもう少し崩れてみせよ、とけしかける言い方である。「折りて見ば」は、手折って近くで見ればということで、古今集の素性法師の「よそにのみあはれとぞ見し梅の花あかぬ色香は折りてなりけり」を踏まえる。花を折るという古歌の言い方が、そのまま男女の仲を結ぶことのたとえになっている。年上の女房が若い貴公子をからかう座興の歌であり、源氏物語竹河巻の和歌はここから始まる。

にほひ:色つやや香りの美しさ。
色めく:色づく。また、色めいたふるまいをする。
はつ花:その季節に最初に咲く花。
上臈:身分の高い女房。
念誦堂:念仏や読経のための堂。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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