さくらゆゑ風に心のさわぐかな
おもひぐまなき花と見る見る
- 歌の意味
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桜のせいで風が吹くたびに心が騒ぐことだ。人の心も察しない花だと見ていながら。
- 鑑賞
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第三部 竹河
三月、桜の盛りである。玉鬘の姫君たちは十八、九ほどで、大君はあざやかに気高く、中の君はほっそりと優美である。二人は幼いころから、この花は自分のものだと争ってきた庭の桜を賭け物にして碁を打った。三番勝負で一番勝ち越した方に花を寄せようという約束である。暗くなるころ端近で打ち終え、女房たちはそれぞれの主人のために念じる。折しも蔵人少将が藤侍従の曹司に来ていたが、兄君たちが藤侍従を連れて出ていて人が少なく、廊の戸が開いていたので、そっと寄って覗き、桜襲の色から大君を見分けていっそう思いを募らせる。勝負は右方の中の君が勝った。その後も姫君たちは花の争いをして日を送っていたが、風が荒く吹いた夕方、桜の乱れ散るのがあまりに惜しく、負方となった大君がまず詠んだのがこの歌である。以下、女房や女童までが加わって、花をめぐる歌のやりとりが続く。
「おもひぐまなき」は、人の思いをくみ取らない、察しがないという意である。散るのを惜しむこちらの心も知らずに勝手に散ってしまう花だと分かっていながら、それでも風が吹けば心が騒ぐ、と述べる。賭けに負けて花を取られた悔しさを、花そのものへの恨み言に転じており、負けを直接には言わない。紫式部集の「折りてみば近まさりせよ桃の花思ひぐまなき桜惜しまじ」と同じ言い回しが用いられている。源氏物語竹河巻の桜の歌六首はここから始まる。
おもひぐま:人の心を思いやること。察し。
見る見る:見ていながら。
賭け物:賭けの賞品。
負方:勝負に負けた側。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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