花を見て春は暮らしつ今日よりや
しげきなげきのしたにまどはむ
- 歌の意味
-
花を見て春は過ごした。今日からは生い茂る嘆きの下に迷うのだろうか。
- 鑑賞
-
第三部 竹河
翌日は卯月となり、兄弟の君たちが内裏に参って忙しくしている中、蔵人少将だけがひどく沈んで物思いに耽っているので、母北の方は涙ぐんでいる。父の夕霧も、対面の折に切り出さずじまいだったことを悔やみ、お前自身が熱心に願い出ていればさすがに無下にはなさるまい、などと言う。そうして例のごとく、少将が大君に贈ったのがこの歌である。
「花」は大君のたとえで、花を眺めるようにして春を過ごしてきたと述べる。「しげき」に「繁木」を、「なげき」に「投げ木」を掛けており、木の縁で嘆きの深さを言う仕立てになっている。「今日」は卯月に入った今日であると同時に、大君の参院が定まった今日でもある。春が終わるとともに望みも終わるという構えで、季節の推移と失恋とを重ねた惜春の歌である。この歌に対しては、大君本人ではなく女房が返す。
しげき:草木が生い茂っている。「繁木」を掛ける。
なげき:嘆き。「投げ木」を掛ける。
まどふ:迷う。思い乱れる。
北の方:正妻。ここでは雲居雁。
惜春:過ぎゆく春を惜しむこと。
- 作者
-
紫式部
- 出典
-
源氏物語
- その他の歌
-