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竹河のその夜のことは思ひ出づや
しのぶばかりのふしはなけれど

歌の意味
竹河を歌ったあの夜のことは思い出すだろうか。偲ぶほどの節もなかったけれど。
鑑賞
第三部 竹河

 年が改まって正月、男踏歌が行われた。薫は右の歌頭に選ばれ、蔵人少将は楽人の数に加わっている。十四日の月が曇りなく澄む中、一行は内裏の御前を出て冷泉院に参る。大君も御局から見ており、少将は見られていると思うと落ち着かず、竹河を歌って御階の下に踏み寄る折には、かつての夜の遊びが思い出されて涙ぐんだ。夜を徹して所々を巡った薫は、翌日院に召され、御息所の御方へ供をする。渡殿の戸口にしばらく座り、声を聞き知った女房と語らううち、御簾の内から差し出されたのがこの歌である。

 「竹河」は催馬楽の曲名で、この巻の巻名の由来でもある。「竹」に「夜」「ふし」を響かせ、竹の節と物事の折とを掛けている。偲ぶほどの節もなかった、と言いながらあの夜のことを持ち出しているところに、含みがある。たわいもない歌ではあるが、薫は自然と涙ぐみ、自分がいかに深く思っていたかを我ながら思い知ることになる。かつて薫が玉鬘邸で竹河を歌った夜が、ここで改めて呼び出され、巻全体を締める役割を果たしている。

竹河:催馬楽の曲名。竹河巻の巻名の由来。
男踏歌:正月に男たちが地を踏み歌いながら諸所を巡る行事。
歌頭:踏歌で音頭を取る役。
ふし:竹の節。転じて事の折、事柄。
御局:御殿の中に仕切って設けた部屋。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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