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いかでかく巣立ちけるぞと思ふにも
憂き水鳥の契りをぞ知る

歌の意味
どうしてこのように育ってこられたのかと思うにつけても、水鳥のようなつらい身の上の宿縁が思い知られる。
鑑賞
第三部 橋姫

 父八の宮の水鳥の歌を受けて、姉の大君が返した歌である。母を早くに失い、宇治の山里で人目にも触れぬまま育ってきた我が身をふりかえり、父の嘆きに応じている。続けて妹の中の君も詠み、三首がひとつづきの唱和となって、宇治の父娘の暮らしが読者に示される。

 「巣立つ」は鳥の縁語で、父の歌の「水鳥」を受け継ぐ。「憂き」には「浮き」が掛かり、水に浮かぶ鳥の姿と、つらい身の上とが重ねられる。「契り」は前世からの宿縁のこと。父が妻を失った嘆きを詠んだのに対し、娘は自分たちの生い立ちそのものの心細さを答えており、宇治の姉妹の境涯がここではじめて語られる。

いかで:どうして。

巣立つ:巣を離れて育つ。

憂し:つらい。「浮き」を掛ける。

契り:前世からの宿縁。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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